Critical Mention ―― チャットで個人宛 Mention(メンション) の乱用を防ぐヒント

チャットで Mention されたので見てみたら、ただの情報共有だった……みたいな感じで最近集中を阻害されているので、どうやったら防げるのだろうと考えている。とりあえず Critical Mention という考え方について、荒削りだがまとめてみる。

Mention の問題点

割り込まれること

割り込まれると今やっている仕事が中断され、短期記憶が失われたり注意力が逸れてしまい、創造性や生産性が損なわれる。

たとえるなら対局中のプロ棋士に対して「ねぇねぇ、今ちょっといい?」と割り込むようなもの。

どうすればいいか?

割り込みを減らせばいい。

具体的には Mention の使い方および通知設定を工夫することで、割り込んでまで見てもらうべき Mention(Critical Mention)の数を減らせば良い

言い換えると、以下の二つが必要とも言える。

  • (1) Critical Mention とは何かをきちんと定めること
  • (2) Critical Mention の利用頻度を下げるようなルールや体制や風土を整えること

Critical Mention を定める

(予備知識) Mention の 4 タイプ

まず前提として Mention の種類をまとめておく。以下 4 種類に分類できる。

  • Important Instant …… 「できるだけ早く反応してくれ。重要な用事だ」
  • Instant …… 「できるだけ早く反応してほしいんだが(最悪反応無くてもまあ良い)」
  • Important 「重要だから必ず読め。対応しろ」
  • Talk …… 雑談でメンションしていじる、個人宛 FYI(例:これあなた向けだよ) など

Critical Mention は Instant である

Instant と Important Instant のみを Critical Mention とする べきである。

Instant 以外の Mention はどう扱うか

Instant 以外――つまりは Critical Mention 以外のメッセージについては こちら(Mention を受けた側)のタイミングで読みたい時に読む で良い。

そもそもコミュニケーションはお互いが拘束されるためコストの高い作業である。少ないに越したことはない。特にクリエイティブな仕事のように「個人の集中」を要する場合は、なるべく個人で集中できる環境を整えるべき。

具体的には、コミュニケーションは可能な限りリアルタイムではなく キューイング (要件があれば突っ込んでおく。相手は空いた時に見て対応する。自分のキューも空いた時に適宜確認して対応する)にする。

キューイングなら、自分のキューを適切に確認して対処しさえすれば 個々は邪魔されることなく仕事ができるし、リアルタイムではないがコミュニケーションも取れる。

Critical Mention の運用を阻む原因

私が障害だと感じている原因(特に組織や人に絡むもの)を雑多に取り上げる。

ただし、いくつか注意を。

  • 現実は会社やチームにもよる
  • 本項で取り上げるのは私の観測範囲における場合である
  • 私自身のことは棚に上げる(私も下記全てに完全に当てはまらないかというと必ずしもそうではない)

チャンネル内容を定期的に確認しない人たち

たとえば「連絡事項を #news チャンネルに流しておくから、各自確認して、必要なら各自対応するように」と運用したとする。

このとおりに対応してくれる人は驚くほどに少ない。そもそも見ていなかったり、あるいは見てもその場で後回しする → 忘れる、で結局対応しなかったりする。彼らの言い分として「面倒くさい」「忙しい」などがあるが、要するに情報源を定期的にチェックする要領が無い or 方法を知らないだけである。中には「言われなければ読まなくていいか」という確信犯さえもいる。

※このような(連絡事項などの対処を)自律的に行う作業は、頭だけでは行えない。タスク管理という専用の技術を使う必要がある。

ともあれ、上記のような「各自見といてね」運用は大体破綻する。結局、誰かが Mention や口頭などでフォローすることになる。つまり Critical Mention を使うことになる。

効率、生産性、創造性に無頓着な人たち

「コミュニケーションはリアルタイムよりもキューイング」という発想が通じない人も意外と多い。

効率や生産性といった概念に無頓着で、たとえば PC をデフォルト設定のまま(たとえば IE やメモ帳をそのまま)使っていたり、起動に何十秒と待ち時間があっても平然としていたり、小さな画面の小さなキーボードのノート PC だけで煩雑な作業をしていたりする。

そもそも彼らは ものづくりという創造を知らない ため、これに起因する事項にはまるでピンと来ない。当然クリエイターの性格や性質などは知らないし、考慮や配慮もできない。どころか自分たちの常識(大半はクリエイターにとって害となるもの)を押し付けてきて邪魔してくる。何もしない方が何倍も助かる ことも少なくない。

こういう人たちが多いと、当然ながら Critical Mention という考えも通じない。

職位や立場にこだわる人たち

要するに 「下っ端が何を言っているんだ」 である。

私は本記事のような提案をしたことがあるが、決まって「生意気」「自分勝手」などと称された。別にそのような言動をしたつもりはない。ただ情報として、提案として、雑談チャンネルに書いただけである。

他にも 「従ってたまるか」「これが俺のやり方なんだ!」的なプライド が邪魔をしているケースもある。特に上位職になると、そのやり方でそこまで昇進したわけで、自信の塊なので、これが強い。

正論が常に最適とは限らないことも、人が感情的な生き物であることも、組織である以上立場といった要因があることも知っているが、これらは思っているよりも深く根付いている。下っ端の意見は、まずまともに取り扱われない、読まれないと考えた方がいい。情報や意見の価値はそれらそのものではなく、その発信者で決まる。下っ端というステータスは価値が低いし、一度「こいつはなんかよくわからんことをほざく失礼なやつ」とレッテルを貼られれば、もう挽回はできない。スパム扱いになりさがる。

ルールの遵守に腰が重い人たち

要するに 仕事においてもずぼら な人たちである。

私生活がずぼらなのは勝手だが、仕事はチームプレーなのだから秩序と効率は必要だ。そしてそれらを担保するには何らかの「仕組み」が必要である。だからこそルールだとか規約だとかガイドラインとかいったものがある。プログラミングの世界でもその手のやり方やドキュメントは普通にある。つくるし運用する。

チャット、もっと言えばコミュニケーションのやり方についても同じだ。

ずぼらな人たちはこのような制定や運用を好まないし、「面倒くさいから」「テキトーでよくね?」と従わない。また、このような過ごし方にも慣れていないので腰も重たいし、まして自ら考えて定めようとは思わない。

ここまでを踏まえて、どう行動するか(整備するか)

一案を雑多に取り上げる。ただし検証などはしていない、ただの想像であり、机上の空論かもしれない。

[管理] 雑談チャンネルをつくる

雑談は「見なくてもいい、反応しなくてもいい」チャンネルとして整備する。

間違ってもここに反応必須の連絡事項や相談などを書いてはいけない。

※ただし雑談で話題を振られるケースについてはここでは議論しない(振られたのに無視したら心証が悪い、など対人関係的に考慮すべき事項が出てくるが、本記事で扱う分野ではない)。

[管理] 連絡事項チャンネルをつくる

各自見ておいてね、各自締切までに対応しておいてね、といったネタについても、専用のチャンネルをつくり、そこに投下する。

そうすれば各々は「自分のタイミング(空いた時など)で読んで対応する」だけで済む。割り込みは生じない。

[個人] 了解や完了をリアクションする

連絡や依頼について、何もリアクションがないと「できたの?できてないの?」と不安になり、結局あとで Critical Mention なり口頭なりで割り込む必要性が生じてくる。

そうならないためにも、リアクションはする。

[個人] 定期的にチェックして対応する、という仕事術を覚える

私が思うに、仕事は頭の中だけで行うものではない。それはプログラミングで言えば Main 関数に何の関数化やクラス化もせずにブワーっと書くようなものである。終わらせるのは早いが、優先度の低いものはおろそかになるし、そもそも考慮事項が多いと破綻する。

ではどうするかというと、タスク管理である。

たとえば下記のようなルールを定め、日々まわせるような仕組みをつくる。

  • 連絡事項チャンネルは一日最低一回は目を通す
  • 目を通した内容のうち、対応が必要なものは TODO リストに入れる
  • TODO リスト内の TODO は一日最低一回は目を通し、必要に応じて対処する
  • すべての TODO について、期限以内に対応できるよう、計画的に対処する
  • 無理ゲーや「これやる必要ある?」などは、すぐに相談して調整する

上記のようなことは我流の思いつきでできることではない。タスク管理という専用の考え方が必要になる。……が、現状タスク管理に関するわかりやすい資料などはなく、一部の物好きや意識高い系しか知らないのが現実だ。

その他

おわりに

Critical Mention という概念について取り上げ、Mention という名の割り込みが乱用される問題を軽減するためのヒントを模索してみた。 一部不満たらたらしてるのはご愛嬌。。。