Markdown ベースで KDP に電子書籍を出版してみた

「ファイル名を指定して実行」のすべて

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前々から書いてみたかった電子書籍。ようやく形になったので色々とまとめておく。

出版までの流れ

  • Amazon Kindle Direct Publishing にログインして会員登録する
    • Amazon アカウントでログイン後、著者情報を登録する
    • 振込先口座情報もここで登録する
  • 書籍データの原稿をつくる
    • 本文(.md)
    • 画像(.jpg)
    • 表紙(.jpg)
  • 書籍データを変換して epub ファイルをつくる
  • KDP にて新しい本を登録
    • epub ファイルと表紙をアップロード
    • 書籍情報も書いて保存していく
  • 問題がなければ 48 時間以内に出版される

なぜ KDP?

Ans: 電子書籍サイトとしてメジャーで、かつ出版方法も簡単みたいだから。

なぜでんでんコンバーター?

Ans: Markdown で書けるから。

会員登録について

  • 著者/出版社情報
    • 本名や本住所を登録する
    • この情報をもとに振込手続きを行うので、ハンドル名とかだと死ぬ
  • 支払いの受け取り方法
    • 振込先の銀行口座を登録し、「支払い通貨」を JPY() にして、さらに「次の通貨で行われた顧客取引の場合」を11マーケットプライスに
      • ブラジル(amazon.com.br)とメキシコ(amazon.com.mx)を除く11カ国
    • ちなみにブラジルとメキシコは小切手による支払いしか対応してない
    • 古いブログでは手数料がなんたらかんたらとあるが、それは昔の話なので無視していい
  • 税に関する情報
    • インタビューに答える
    • TIN という米国納税者IDを聞かれるが、持っていないので空欄でいい
    • インタビューに完了すると「適用される源泉徴収税率 30%」となるが、これは米国内で売れた時の税率なので気にしなくていい

書籍データと変換

KDP は epub ファイルや docx ファイルをアップロードする方法をサポートしているが、私は Markdown が好きなのと、変換処理に手こずりたくはなかったので でんでんコンバーター を使用。

用意するデータは以下のとおり。

  • 書籍本文.md
  • 画像1.jpg
  • 画像2.jpg
  • ...
  • cover.jpg (表紙)

Markdown のように普通に書いていけばいい。細かい文法の違いや運用については以下。

  • 電子書籍専用文法は でんでんマークダウン を見ること
    • 使うのはルビと改ページくらいか
  • 見出しはレベル1を「章」、レベル2を「節」に
    • レベル1がタイトルで、レベル2が章、レベル3が節、ではない(タイトル用の見出しは要らない)

出来上がったら、でんでんコンバーターにて上記ファイルをすべて選択してアップロード。epub ファイルをダウンロードできるので、ダウンロードしとく。

変換した epub ファイルのプレビュー

Kindle Previewer | Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング がおすすめ。

ファイルサイズ 260MB で、動作も中々に重いが、ウェブ上のプレビューアよりは断然早い、使いやすい、見やすい。

Markdown ファイルのプレビュー

epub に変換するのは面倒くさい、でも Markdown で書いた結果を HTML で見てみたいという場合は GitHub にアップするといい。

プライベートリポジトリを作って、上記データをまるごと放り込めば、もうそれだけで書籍っぽく表示される。画像のリンク切れや Markdown 文法のミスもわかる。

執筆フロー

Markdown を書くフェーズ、でんでんコンバーターで変換するフェーズ、Kindle Previewer でプレビューするフェーズの三つがある。後者二つは手作業な上に時間もかかる(といっても十数秒~数十秒だが)ので、まずは Markdown ファイルのみで本文を完成させる のが吉だろう。

で、本文が完成したら、あとは後者二つを繰り返して細かい見栄えや言い回しを修正していく。その際も、一つ修正してまた変換し直すよりは、まずは全部読んで指摘事項をメモしておいて、その後に指摘事項を全部反映する、のようにやるのが良い。

つまり 変換作業は時間がかかるので、いかに変換作業回数を減らすかが肝。ここに無頓着だと、あっという間に何十分何時間と時間が消えていく。

epub データのレイアウト(体裁)を変えたい

でんでんマークダウンは css 編集に対応しているので、css をいじる。

Downloads - でんでんコンバーター より default.zip をダウンロードし、展開した default.css をコピーして markdown ファイルと同じファイルに置く。これをいじってレイアウトを変える。なお、でんでんコンバーターにアップロード時は、この css ファイルも忘れず選択してアップロードすること。

css のテストは 電書ちゃんのでんでんエディター 上で試すと理解が早い。

以下、参考までに私が 「ファイル名を指定して実行」のすべて で使った css を載せておく。

/* -------
   Fontsize
   ------- */

/* 2, 1.5, 1.25 → ちょっと大きすぎるので小さめに */

h1 {
  font-size: 1.5em;
}

h2 {
  font-size: 1.25em;
}

h3 {
  font-size: 1.125em;
}


/* -------
   Borders
   ------- */

/* 見出しを枠線で強調 */

h1 {
  border-left: 8px ridge #000000;
  border-bottom: 4px ridge #000000;
}

h2 {
  border-left: 6px solid #000000;
}

h3 {
  border-left: 6px double #000000;
}

/* テーブルに枠線を引く */

table {
  border-collapse: collapse;
  border: solid 2px black;
}
table th{
  border: solid 1px black;
}
table td {
  border: solid 1px black;
}

/* --------------
   Margin Padding
   -------------- */

/* 見出し間のマージンが広いので小さく*/

h1 {
  margin-top: 20px;
  margin-bottom: 20px;
}

h2, h3, h4 {
  padding-left: 6px;
  margin-top: 16px;
  margin-bottom: 16px;
}

/* リストインデントスペース深すぎる(2em)ので小さく */

ul, li {
  margin-left: 8px;
}

/* ネスト時は <li><br/><br/><ul> と br が二つ入って二行分空くので消す */
li br {
  display: none;
}

/* 段落間が広すぎる(1.25em)ので, 狭く */

p {
  margin-top: 8px;
  margin-bottom: 8px;
}

/* 画像と段落間もやや狭いので, 画像側のマージンを広めに. */

img {
  margin-top: 12px;
  margin-bottom: 12px;
}

/* 同上テーブルも */

table {
  margin-top: 12px;
  margin-bottom: 12px;
}

/* ----
   Code
   ---- */

/* 黒背景白文字ベースと, 左寄りすぎで見づらいのを少し離す.
   code 単体だと pre 内の行毎に適用されるのでセレクタ指定は工夫する. */
pre {
  margin-left: 2px;
  padding-left: 4px;
  color: white;
  background-color: #333333;
  border: 1px solid silver;
}
p > code, li > code {
  margin-left: 2px;
  padding: 4px;
  color: white;
  background-color: #333333;
}

/* ----
   Misc
   ---- */

/* 見た目が不揃いなのを解消する
   - 半角英文字使うので等角じゃないと不均一になる
   - 全角半角入り交じる行が改行前に勝手にスペース調整されるのを防ぐ
*/
p, li, code, table {
  font-family: monospace;
  word-break: break-all;
}

/* 改行位置がほんの少しずれるのを回避する */
p {
  text-align: justify;
}

/* 段落ごとに自動でスペースを付与 */
p {
  text-indent: 1em;
}

/* 太字単体だと強調が乏しいので下線も付ける */
strong {
  text-decoration: underline;
}

表紙

おそらく一番の難所。普通は業者に頼むらしいが、お試しの個人出版で頼むのは気が引ける。せっかくなので自力でつくってみた。

表紙全般:

  • 本文からはリンクしない
  • jpg 形式
  • x : y = 1 : 1.6 つまり x, y = 1000, 1600
    • 理想は x, y = 1600, 2560
    • 最低でも x, y = 625, 1000
  • 圧縮せず高画質で
  • 表紙境界用に 3-4 pixel の細い薄灰色線があるとよい

私は x, y = 1600, 2560 サイズでつくることにした。

続いて表紙デザインだが、私に語れるほどの知見はないので頑張って調べてください。あと色んな作者さんの表紙を覗いてみるのもオススメ。自分でも書けそうなシンプルな表紙もあったりする。

最終的に私は以下のような表紙をつくった。

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表紙中央はタグクラウドというもので WordClouds.com で無料で作れる。 商用利用も普通にできる。引用しておくと、

Are there any restrictions on using my word clouds?

The word cloud images you create are yours to use any way you see fit. Feel free however to give credit to Wordclouds.com and spread the word! You are even allowed to use the generated word clouds commercially.

ただ、このタグクラウド画像つくるのに数時間は要した。意図したキーワードを上手いこと表示させるための重み付けパラメーターの指定に苦戦。一部を挙げておくと、こんな感じ。

8 RUN
3 PATH
3 notepad
2 AppPath
2 PATHEXT
...
1 system
1 .BAT
1 .CPL
1 winver
1 ncpa
1 NoRun

「RUN」は表示させたいから重めにして、あ、でも PATH も表示させたいから……みたいにかなり微調整した。

KDP にて新しい本を登録

KDP にログインして、つくった Markdown やら表紙をアップロードしたり、書籍情報を入力したりする。

私の場合、1冊売れたら100円、というわかりやすい指標を試すつもりで、以下のように登録。

  • DRM(コピープロテクト)
    • する。
    • 「無料でもいいから読んでもらいたい!」でもない限りは、すればいい
    • 今回は有料で売るつもりなので、価値を落とす真似はしない
  • KDP セレクト
    • しない。
    • KDP セレクトをするとロイヤリティ(印税率)を35%→70%にできるが、90日のKindle縛り(他のサイトで売れない)がある
    • また Kindle Unlimited などの読み放題スペースにも掲載され、アクセス数が稼げるのがメリットらしいが、私は下手に数ページ読まれて購入されないのがもったいないなと思った
    • 総合すると、初めてだし、まずは「しない」でいいか、と判断
  • 値段
    • 300\ JPY
    • 1冊売れたら100円、とわかりやすいので

登録後、48時間に審査され、問題無ければ出版される。

私の場合、昨日夜 22:00 頃完了して、今朝 7:00 頃確認したら、既に出版されていた。問題無ければスピーディーに行くのだと思う。

出版後の確認

カテゴリがなぜか「本 › 人文・思想 › 教育学」という無関係なカテゴリだったので、変更依頼を出した。

Amazon Kindleダイレクト・パブリッシング:KDPについてのご質問のお問い合わせ より 本の詳細 > カテゴリーおよびキーワードを更新 と辿って、以下内容を書いて提出。

以下書籍のカテゴリ情報の変更をお願いいたします。

電子書籍名:『「ファイル名を指定して実行」のすべて 』
ASIN番号:『B07JF3BHP5』

現在のカテゴリ:
・Kindleストア > Kindle本 > 人文・思想 > 教育学

変更後のカテゴリ:
・Kindleストア > Kindle本 > コンピュータ・IT
・Kindleストア > Kindle本 > コンピュータ・IT > OS

2018/10/14 08:19:34 現在、まだ結果は来てない(出したのが 7:40 くらいだし)。 (2018/10/15 追記) 変更されました。

おわりに

KDP というシステムとでんでんコンバーターという Markdown ベースコンバーターのおかげで、割と簡単に出版できたかなと思う。

とりあえずは結果が楽しみです。何もしないと誰にも読まれずに埋もれるみたいなので、宣伝も積極的にやっていきます。皆さまも、もし気になったらぜひ購入してください。

余談: 元ネタって Qiita だよね?

鋭い方は気づいているかもしれませんが、元ネタは 「ファイル名を指定して実行」を極める - Qiita です。

Qiita の方は「わかる方向け」にかなり簡単に書いてますが、今回の書籍は、初心者の方でも読めるよう丁寧に書いています。また、画像もふんだんに利用したり、履歴や PATH といった中上級者向けトピックも内容を何倍にも増やして解説しているので、ぜひ読んでいただければと。