ポメラ DM200 の後継版 DM300 があるとしたら僕はこういうものを望みます

ポメラニアンの間で「ポメラ DM300 はどうあるべきか」という持論や要望を展開する遊びが流行っている……というのは嘘だが、いくつかのブログ記事があった。それらを読んで、僕も語りたくなったので、存分に語ってみる。

次期ポメラへの要望(欲しいもの)

マルチウィンドウのサポート

僕が一番欲しいのは、ファイル A を編集している間に、別のファイル B の中身を ファイル A を開いたままで 見る――という機能。

「え?いったんファイル A を閉じてファイル B を開けばいいじゃん」と思われるかもしれないが、それは手間である。PC でのたとえになるが、デュアルディスプレイがなぜ生産的かというと、視線移動だけで他の情報にアクセスできるからだ。「ウィンドウ重ねて Alt + Tab やタスクバーから切り替えればいいじゃん」とはならない。

僕のように短期記憶にすぐれない者は、デュアルディスプレイのように 視線移動(に限りなく近いレベルでの低コスト)で、他のファイルの内容も見たい のである。

この機能がサポートされれば、長編小説や書籍の執筆も射程に入る。

ユーザー辞書の導入

新しく登録した単語はそれ専用の設定画面と一覧を用意してほしい。

DM200 では「ユーザーが新しく登録した単語」と「自動学習で学習させた単語」とがいっしょくたになっている。前者のみにアクセスすることができず、メンテしづらい。

Google 辞書でいうユーザー辞書の概念。あれが欲しい。

見出し単位の範囲選択に対応してほしい

Ctrl + Shift + Up/Down で、見出し単位の範囲選択もできるようにしてほしい。

最後に編集したところに戻る

秀丸エディタには「最後に編集したところに戻る」という、文字通り最後に編集した箇所に一発で戻れる機能があるのだが、これがポメラにもあると便利。

何が便利かというと、一通り編集し終えた後、あちこち読み返して、「執筆を続けるかー」となった時に、さっき編集し終えたところに一発で戻れるのである。

カーソルキー上下で変換候補を選択

ATOK の仕様なのかもしれないが、DM200 では変換時にカーソルキー上下で変換候補を辿ることができない。カーソルキー下を押すと変換が終わってしまう。

  • 上候補: カーソルキー上
  • 下候補: スペース ← ここにカーソルキー下も加えてほしい!

カレンダー強化: ジャンプ

DM200 の素晴らしい点の一つがカレンダーだと思う。この「時系列にメモできる機構」は、使い道があれば極めて強力である。

さて、要望だが、カレンダーの各予定に一発ジャンプする機能が欲しい。たとえば、

  • 最後の予定に移動
  • 最初の予定に移動
  • クイック移動(数字キー 1-9 に指定日を割り当てて、キー一発でその日を開く)

といったもの。つまりはキー一発で指定日に素早く飛べるようにしたい。現状 DM200 ではカーソルキーで頑張ってスクロールするか、予定に検索キーワードを付けておいて検索からジャンプするかしないといけない。もうちょっと素早くアクセスしたい。

カレンダー強化: 複数カレンダーのサポート

カレンダー絡みの要望をもう一つ。

カレンダー設定を複数保持したい。

カレンダーの用途は以下のように様々であるが、

  • 小説Aの時系列カレンダー(2017年4月から始まる)
  • 日記カレンダー
  • スケジューラー
  • サブのメモ用(カレンダーは今開いているファイルを閉じずに開けるので、サブのメモ手段として重宝する)
  • ……

DM200 ではカレンダー設定が必要しかないため、これら設定がすべて混在してしまう。設定は分けて、切り替えられるようにしてほしい。

一ファイルの文字数制限緩和

DM 200 の一ファイルの最大文字数は、説明書によると「1文字3バイト換算で10万文字くらい」となっているが、これをもう少し緩和してほしい。アウトラインを使って文章を書けば、一ファイルが 10 万文字を超えることはよくある。日記で1日2000文字書けば 50 日で到達するし、小説では文庫本一冊分の原稿も書ききれない。

文字数で言えば 30 万文字くらいは緩和してほしいかな……。

あとは処理速度もか。DM200 では 7 文字くらいでも保存に数秒かかるくらいもっさりする。これを秒以内に抑えてもらえると非常に助かる。

今は 10 万文字以下だと思っている(試したことない)けど、数十万文字耐えられるようにしてほしい。 保存のスピードとかも。今は 7 万文字くらい書くと保存に数秒を要する。

次期ポメラへの要望(やらなくていいこと)

ハードウェア面はこのままでいい

ハードウェア面では DM200 は現状でも理想に近いと思ってる。

これ以上小さくてもダメ。使いづらくなる。

これ以上大きくてもダメ。携帯しづらくなる。

タッチパネルも要らないし、バックライトも要らない。そんなもののために貴重なリソースを費やす必要はない。タッチはキーに比べればまだまだ不安定だし速度も遅いし技術的にもリソースを多く費やす必要がある。バックライトは、そもそも「暗い環境でも使えるようにする」がニッチすぎるし、その割にはリソースを食うから、費用対効果があるとは思えない。

画面構成も不満無し

他のブログではステータスバーがほしいといった要望があったが、ステータスはメニューからたまに見ればいい。リソースを投じてまで、リアルタイムで表示し続けるほどの価値はない。ただし、余裕があるなら表示非表示を選べるようにした上で、サポートしても良い。

他のツールは要らない

ブラウザや表計算が欲しいといった要望も見受けられたが、正直言って要らない。

それではもはやスマホである。あるいは PC か。ポメラという執筆端末としての価値は失われれる。ポメラは万能ハイテク端末ではない。携帯性に優れた執筆マシンである。

通信や同期機能も要らない

上と被るが、ポメラは執筆マシンであるべきで、通信や同期に頼るのは本質から逸れているように思う。DM200 の Sync や QR コード程度なら良いが、これ以上高級な通信や同期を(リソースを費やしてまで)取り入れる必要はない。そんなことに費やすくらいなら、エディタの操作性や機能、あるいは性能の向上に力を注いでほしい。

要望ではないが持論

ポメラのあるべき姿

ポメラはポメラ単体で快適に文章執筆できることに特化するべきだと僕は思っている。

たとえるならデジカメのようなもの。デジカメは撮影に特化したデバイスである。撮影物の編集加工やアップロードを、デジカメそのものから行うなんてことはしない。それは後で、PC にデータ転送して行えば済む話だ。

ポメラも同じで、文章執筆に特化する。文章執筆のための機能や操作性や性能は惜しまず追求し、文章のその後(ポメラで書いた後)の扱いには関与しない――このスタンスこそが、ポメラをポメラたらしめている理由であり、存在意義であると僕は思う。

以下記事でも書いたが、ポメラは一つのジャンルだ。

PC でもスマホでもない、全く別の概念。コンパクトで、しかし打ちやすい文章入力端末。ただただ執筆に専念できるマシン――それがポメラだ。ウェブ閲覧とか、データ同期とか、表計算とか、そういう「執筆でない諸々」は要らない。それは後でやればいい。PC でやればいい。スマホでやればいい。タブレットでやればいい。

……もちろん、「執筆でない諸々」もできるに越したことはない。しかし、まがいなりにもエンジニアである僕には察しがつくが、まだまだ現代技術では難しいはずだ。あるいは、実現できるにしても非現実的な価格になってしまう。だったら、リソースのすべてを「文章執筆」にだけ費やして、文章執筆マシンとしての価値にウェイトを置くべきだろう。

未来のポメラに対する懸念

僕が懸念しているのは、ポメラという「文章執筆マシン」ジャンルがなくなってしまうことである。

「執筆でない諸々」の拡充を望むポメラニアン達に応える形で、今後もポメラには「執筆でない諸々」が色々搭載され、劣化版 PC のような存在に成り果ててしまうのではないか……と危惧している。

Windows しかり、風来のシレンしかり、このような悲劇は今まで幾度となく繰り返されてきた。メカニズムはわかっている。少数派の苦悩と大人の事情である。

  • メカニズム
    • 「必要最小限の機能美」だけではずっとは食っていけない
    • 「必要最小限の機能美」を求めるユーザーは少数派、かつ「必要最小限の機能美」を理解する開発陣も少数派(そして彼らはやがて現場や会社を離れていく)
    • この先食べていくためには、「必要最小限の機能美」を離れて、リッチにしていく必要がある(そうせざるをえない)

このような悲劇がポメラにも起きないことを、僕は祈っている。

参考

他にどんな持論や要望があるかを軽く調べてみた(一部 DM100 時代の古いものもあるが)。