チャットで応答が悪い(返信が遅い)人の特徴 6 つ

「とりあえず口頭で」な風土を撲滅させるために、チャットの活用を推進しているのだが、中々に根が深いことがわかってきた。一言で言うと、理由や事情は様々だが、チャットという「スピーディーにタイピングで文章を打つ」ことが不得手になってしまっている人が多数存在する。

これを「チャットで応答が悪い(返信が遅い)人の特徴 6 つ」と題して、まとめてみたい。

※このタイトルに挑発や見下しの意図は無い。他に適切なタイトルが思い浮かばなかっただけである。

1. タイピングが遅い

そもそもタイピングが遅ければチャットのハードルはグンと上がる。極力使いたくないと考えるのは自然な発想だ。

しかし、この原因はクリティカルではないと私は感じている。というのも、タッチタイピングができる人の中にも応答が悪い人は多々存在するからだ。

2. 文章で表現することに慣れていない

私はソフトウェア会社に勤めているが、仕事内容はどちらかといえば作家と編集者でいう編集者に近い。また、昇進すると管理職となり管理業務に追われる。

いずれにせよ、仕事中の行動としては何かを書くために手を動かすよりも 口を動かしていることが圧倒的に多い。あるいは煩雑な資料やメールを読んだり、マウスベースの社内システムを使うことに忙殺されている。実際、仕事風景を見ていると、過半数は打ち合わせをしているか、マウスを握ったまま画面とにらめっこしている。キーボードをガシガシ叩いている人間は少数派だ。

で、本題だが、そのような人たちは 言いたいことを文章で表現することに慣れていない。口頭であれば外向けの丁寧な表現であろうと、内輪向けのラフな言い方も瞬時に喋れるが、文章になるとそれができない。

どうも私が見た限りだと「文章=ちゃんと書く、しっかり書く、マナーや礼儀にも留意する」と捉えている節があるように思える。なんというか、非言語コミュニケーションの 非言語の部分をすべて文章に反映させるのに苦心している というべきか。いわゆる作文である。文章での発言=作文、だからコストがめちゃくちゃ高い。

当然、チャットもそのコストが高いものに含まれる。気軽に発言するにはハードルが(コストが)高いのだ。

3. 文章という「形に残り続けるもの」を残すことに抵抗感がある

文章でコミュニケーションすることのデメリットの一つは ログが残る ことだ。もっと言えば 後でごまかせない。お茶を濁せない。チャットメッセージというログを残すことは、いわば形に残る弱点を蓄積するようなものである。この事実に耐えられないのだ。

実際、僕の観測範囲でも、昇進や評価を気にしないような変わり者は発言頻度が高く、また内容もフランクである。一方、そうではない大多数の人間は基本的に沈黙を保つ傾向にある(ただし身内のみが集まったプライベートなチャンネルではその限りではない)。

今まで複数の部署で、複数のチャット環境に触れてきたが、アクティブ(常時ログインし、身内プライベート以外で複数回発言している)な人数の割合は 5~15% くらいだった。この傾向はどこでも同じだった。数十人規模のチャットでも、数百人規模のチャットでも同じだった。たぶん(外も含めて一般的かどうかはさておき少なくとも会社内では)一般的なのだろう。

4. PC が重い

私のごく限定的で閉鎖的な観測範囲ばかりで申し訳ないが、重たい Windows をそのまま使っている人があまりにも多い。文書ファイル一つ立ち上げるのに 10 秒以上待っている人はザラだし、中には分単位の待ち時間を平然と受け入れている人もいる。

そういった人の PC を見てみると、デスクトップにファイルは散らかっているし、ブラウザは IE のままだし、セキュリティソフトのスキャンやアップデートも馬鹿の一つ覚えみたいに毎日(それも業務時間中に)回しているし、不要なアプリを終了させずに立ち上げっぱなしでタスクバーには何十個とタスクボタンが並んでいる。PC が重たくなるのも当然だ。

一方、たとえば私の例でいうと、PC は重くならないよう設定を工夫している。デスクトップにはファイルを置かないやり方をしているし、ブラウザは Firefox(少なくとも IE ではない)だし、スキャンやアップデートのスケジュールは社内ルールに逸脱しない範囲で頻度を落とし、また時間帯を工夫している(例: PC を触らない昼休憩中にする)し、不要なアプリは落としている。他にも細かいテクニックを含めば何十と実施している。

おかげで PC はあまり重くない。チャットで発言しようと思っても、すぐに発言できる。ウィンドウの切り替えには数秒もかからない。一方、重たい人は、数秒どころか十数秒かかることもざら。これでは発言に抵抗感が増えるのも無理はない。

5. 道具が貧弱である

昨今のセキュリティやら働き方改革やらの影響で、キーボードもタッチパッドも使いづらく画面も狭いシンクラ端末だけを使って仕事をしている人が増えている。しかし、そんな貧弱な手段だと、チャットウィンドウに切り替えて発言するという行動もやりづらく、抵抗感が増す原因になっている。

逆に、このあたりを改善すると、発言までの行動コストがだいぶ減る。たとえばキーボードを打ちやすいものにして、マウスも使って、画面をデュアルにすれば、セカンダリモニタに開いているチャットウィンドウに Alt + Tab なりマウスクリックなりでアクセスするだけで切り替えられるし、発言も打ちやすいキーボードでサクサクできる。

この差は意外と大きい。私もシンクラを使うことがあるが、発言ペースは明らかに落ちる。切り替えるのが面倒で、また打ちづらくて、チャットする気が失せるのを自覚する。

6. 仕事のやり方が下手(というより知らない)

メールばかり見ていては仕事にならないように、チャットばかり見ていても仕事にならない。そのため あまり見ない(まあ見なくてもいいや。何かあれば上がってくるし) 、と割り切る人は意外と多い。特に物理的に忙しく、また(チームや部下に対する)ある程度のわがままが許容されやすい管理職やリーダーはこの傾向が強く、自分宛のメッセージをしばしば(無意識あるいは意図的に)ロストする。

これは多くの場合、 仕事のやり方が下手(というよりやり方を知らない)なだけだ

チャットに新着がある度に即反応していては、集中できないのは当然。きりのいいタイミングで一日数回「まとめてチェックする」ようにすればいい。また、チェックするにしても、読んだものを片っ端から処理するのではなくて、いったんタスク管理に入れるだけに留める。それで一度メッセージを処理しきって、その後でタスクの実行順序を考える(もちろん GTD に代表されるように 2 分で終わるタスクはその場で済ませる、などのテクニックも必要だが)。そうすれば漏れはないし、遅くとも 2 日以内には返信できる。

物理的に処理量が多すぎるなら、それは仕事のやり方以前の問題だ。仕事を減らすようチームやステークホルダーに働きかければいいし、そうするべきであろう。承認フローや相談タイミングの見直しやルール化を検討してもいい。また、他にも――ときりがないのでこのくらいにしておく。

「なんとなく適当に衝動的にこなす」ではなく、もっと賢くシステマチックにこなす、という仕事の基本が意外と知られていないのだ。

……まあ無理もないだろう。タスク管理をはじめ、このようなテクニックは学校で習うわけではないし、会社が教えてくれるわけでもない。よほど意識が高くてハイレベルな環境で過ごしているか、そうでなければ読書や趣味で嗜まない限り、知ることはできない。閉鎖的に、会社内でバリバリ仕事をしているだけでは知りえない。

おわり

以上、かなり雑多で主観的で散文的になったが、チャットの利活用を阻む原因として「個々の性質」があり、具体的に 6 つほど性質を挙げてみた。

改めてまとめておく(下記は更に分類して 4 つだが)。

  • 能力が低い(タイピングスピードが遅い)
  • 道具が悪い(PC が重い、周辺機器が貧弱など)
  • 心理の問題(文章で表現することに対する抵抗感, 不慣れ, リスクなど)
  • 忙しい(タスク管理などを知らず要領よく捌けていない)

チャット推進の道のりはまだまだ遠そうだ……。