残業を減らすために心掛けることや取り組むこと
前提
筆者の観察範囲と主観をベースに書いているので職種や職場環境や視点に偏りがある:
- 例1: 大企業
- 例2: IT 企業
- 例3: 乱暴だが文章をシンプルにするため「彼らは総じて~~」のように、いっしょくたにした書き方をする
本記事で主に取り上げる内容:
- X 細かい仕事術やビジネスハック
- O 残業をもたらす要因と、それら要因を多数持つ事象と回避方法
- 「~~を行えば残業が減らせる」は書きますが、じゃあ「~~を行うためにはどうしたらいいのか」といった手段は取り上げません
- しかし後半は仕事術っぽいトピックが増えてくるかも
会社や部署やチームの取捨選択
会社や部署といった「居場所」を選びましょうという話。「残業が多くついてまわる性質を持った居場所」もあるので、そのような居場所を避けることが重要。
リテラシーの無い人が居る場所には行かない
たとえばセクハラの自覚が無く平然と女性社員をプライベート質問でいじったり、LGBT や ADHD を知らなかったり、有給取得時に執拗に理由を訊いてきたりするような古い人が上に立っているような会社や部署やチームは避けるべき。彼らは総じて頭が堅く無知。彼らには「定時で帰りたい」といった価値観が通じない。ただの甘えや怠けだとみなされる。
逆に、上がリテラシーを持つ人間であれば、ある程度は配慮・尊重してもらえる。
転職する
会社は変わらなかったり変われなかったりすることが多い。優秀な人が転職するのは、変えるのが無理ゲーだから。会社を変えるよりも自分の居場所を変える方が(そのために受験勉強みたいな努力が必要だとしても)はるかに優しい。
異動する
(特に大企業は)部署ごとに世界観がまるで異なっており、部署Aでは残業当たり前でも部署Bでは半数以上が2日に1日は定時で帰れていたりする。部署Aに居る限り、残業は避けられない、なんてこともありえる。部署Aから別の部署に異動した方がてっとり早い。
仕事の取捨選択
「残業が多くついてまわる性質を持った仕事」があるので、そのような仕事を避けることが重要。また、自分の立ち回り次第で、そのような仕事が安易に降ってくるのをある程度防ぐこともできる。
本質的に時間のかかる仕事には手を出さない
本質的に時間のかかる仕事とは:
- ステークホルダーの多い仕事
- 打ち合わせが増えがち
- そもそも「人」は複雑で不定で扱いづらい対象
- 物理的作業の多い仕事
- 物理的作業 = 実際に手や足を動かす作業
- PC を使う作業だと効率化や自動化はしやすいが、物理的な作業はそうはいかない
- 例:
- 機材や会場の準備/撤収
- 筆記や郵送を伴う諸作業
- 印刷を伴う諸作業
- つまりボリュームの多い物理的作業 ≒ 短縮の余地が少ない = 必然的に残業になる
- ボリュームが少ないなら特に問題はない
- 管理職
- ルールに従って調整/申請/管理するべき事項が山のようにある
- 会社によっては「昇進する≒プレイングマネージャになる」のケースもある
- 昇進前の業務 + 管理職業務となり仕事の物量が桁違い……
- 作業で使うシステムやファイルも、レガシーなシステムだったり Excel/Word だったりしていちいち使いづらい、重い、遅い
QCD の要求されない仕事を選ぶ
QCD の要求がきつければきついほど残業が増える。なぜなら、
- Quality がきつい → 必要な仕事量が増える
- Cost がきつい → 必要な仕事をこなすための手段が限定される(効率的な手段を選びづらくなる)
- Delivery がきつい → 必要な仕事の密度が増える
QCD が比較的緩い仕事の例:
- 顧客がついていない仕事
- 商用可や製品開発の前段階である調査業務や研究業務
- クライアントが社外ではなく社内の仕事
- 社内の社員向けのシステム開発や情報提供など
- 社内の部署向けの……
- 社内のチーム向けの……
ポテンシャルを申告して過剰分を断る
「ここまではこなせますが、これ以上はできません、今のままだとこれだけ溢れてしまいます。溢れた分をカバーするのにこれこれほどの無理をする必要があります。現実的ではありません。だから、これこれの部分はカットする必要があります」
これを言えるようにする。重要なのは主張の根拠として 私の実力(ポテンシャルや性格や病気やその他事情等)はこの程度だ を伝えること。もっと言うと、
- 実力以上の力は出せない
- 私の実力はこれくらい
- 私の実力で考慮すると、ここまでしか終わらない
という風に主張を持っていく。チームや上司もバカじゃないので、ちゃんと伝われば「じゃあカットしよう」とか「じゃあ他の人に任せよう」と配慮してくれる( というよりそうするしかない )。もちろん、アピールが露骨だと評価は落ちるのでトレードオフではある。
PC が重くなるような仕事には手を出さない
(主に 性能の悪い PC しか使えない環境下にいる という条件付きだが)仕事内容によっては、どう考えても PC の処理能力を超えており、多大な待ち時間を要することがある。当然、待ち時間の分だけ業務時間も増えてしまい、蓄積すると残業に繋がるほどの被害になる。このような仕事は避けた方が良い。
- 例1: 多数の Excel/Word/Powerpoint を開くような事務、雑務、管理業務
- マニュアルや申請書類がことごとく Office となっている
- 情報が散らかっており、複数のファイルを開くのが日常茶飯事
- ただでさえ情報保護のために暗号化がかかっているので余計に重い
- 例2: 保守対応
- 環境再現のために仮想マシンをローカルで立ち上げなきゃいけない(自分のPCをホストOSにしなきゃいけない)
- 例4: Java を用いた開発
- Eclipse が重い
- ビルドも重い
もう一度述べるが、上記業務が一般論として悪いという意味ではない。「性能の悪い PC しか使えない環境下で」という前提がつく。
スタンスの主張
残業は悪だと思っていない人も多数いらっしゃるので、価値観の話になるが、しっかりアピールする必要もあるかもしれない。そうしないと伝わらない。仮に伝わらなくとも「定時で帰るキャラ」とみなされれば帰りやすくなるので、主張は大事だ。
定時派であることを主張する
残業は当たり前だ、とする価値観を持つ人は少なくない。中には自分がそういう価値観に染まっている自覚さえない人もいる。そんな世界の人たちは残業に対する忌避感に疎いので、平気で残業を犯す。そうでなくとも「まあいいか」「仕事だし」と軽く考える人(勤務時間に特にこだわりがない人)も多い。
このような価値観に押しつぶされないためには、 自分が定時派であることをストイックに主張する 必要がある。そうしないと伝わらない。
行動例:
- 毎日定時のチャイムが鳴り終わったら、即「お疲れ様です」と挨拶して帰る
- 打ち合わせの開催時間が定時を超えた場合に「定時超えてますけど」と反発する
- 「みんなもやっているから」と言われた時に「だからといって残業していい理由にはなりません」と主義思想や屁理屈をこねて反発する
- 「就業規則でもあるだろ、命じられたら残業しなきゃいけないって」と言われた時に「命令の正当性を感じません。ホットライン部署に訴えます」などと反発する
- 本当に正当性が無い場合、かつ当該部署があるような企業の場合に限るが
主張の説得性を持たせるために必要なこと:
- やむを得ない理由があること
- 例1: 子供の面倒
- 例2: 親の介護
- 例3: 持病があり通院している
- 例4: 仕事のパフォーマンスが定時内しか保たない
- 自分の仕事をちゃんとこなしていること
- 必要な時(これをしないとチーム全員に迷惑がかかる等)はちゃんと残業すること
- 必要な時が「いつも」だったら辛い
- チームや PJ が極端に忙しくないこと
- 忙しいと「お前も手伝え」となりやすい
- 「私は定時で帰りたいんです」という価値観を周知させること
成功例の事例レベル:
- LV4: 円満に認めてもらえている
- 例1: 周囲「あの人には子供がいるから仕方がない」
- 例2: 周囲「あの人は重たい病気を抱えているから仕方がない」
- 理想ではある
- 誰もが持てる理由ではないので使いづらい(というか使えない)
- LV3: 個性として認めてもらえている
- 例1: 周囲「彼は定時で帰りたい人だからね」
- 例2: 周囲「彼は人一倍成果を出してるから文句は無い」
- LV4 に至れない場合の理想
- 周囲が寛容か、自分が人一倍できる人間でないと使えない
- LV2: 面倒くさい、気難しそうな人間として認定されている
- 例1: 周囲「あの人には仕事頼みづらい……」
- 例2: 周囲「どうでもいいわ。関わるだけで疲れる。ほっとけほっとけ」
- 一応認めてもらえてはいるが、マイナスの感情が多かれ少なかれ存在するため、あまり居心地は良くない
- LV1: 放置、排除
- 例1: 周囲「あいつには関わるな。放っておけ」
- 例2: 周囲「あの人なんで仕事してないん?」「上司と以前めちゃくちゃ衝突して以来、干されているらしいよ」
- 無関心や敵対が渦巻いているパターン。非常に居心地が悪い
※ただしやむを得ない事情や一人前の実力を持っていたとしても、LV2 や LV1 みたいにマイナスの雰囲気がまとわりつくことはある。
余計なプロセスの削減
労働時間を肥大化させていく無駄を省いていくというアプローチ。
「話しかけられる」という割り込みを減らす
割り込みはなぜ悪か:
- 割り込みはコンテキストスイッチング(頭を切り替える)を発生させる。そうなると個々の仕事に集中しづらい。いわゆるマルチタスクのような状態になる
- 人間が最も生産性を発揮できるのは、一つの仕事に集中するシングルタスクである
- ピンと来ないなら将棋の棋士をイメージしてほしい。対局の最中に「ねぇねぇ」と割り込まれたら鬱陶しいはずだ。対局が終わるまで割り込みゼロが理想である
割り込みは極力防止したい。その割り込みの主因となるのが「話しかけられる」ことである。厄介なのは「人間だからそりゃ喋るでしょ」などと開き直りやすいこと。もっともらしい屁理屈で非効率の正当化をしている。良くない。
「話しかけられる」割り込みを減らすためにやること:
- 人の良さを出しすぎない(頼られやすくなる)
- よく喋る人には近づかない
- 例: 席替え時に「よく話しかけてくる役員から離れた席」を希望する
打ち合わせはプロセス化する
人間は寄り道が好きで支離滅裂な生き物なので、何のサポートも無しに円滑・効率的に話し合いを進めるのは非常に難しい。だからこそ会議のハウツー本やコンサルが腐るほどある。
どうすれば?:
- 会議のハウツーを読んで、効率的なやり方やフレームワークなどを理解し、ストイックに取り入れる
- ゴールとアジェンダを明確にする
- 脱線したら話を戻す
- タイムキーピングする
- 開催時間は守る(遅刻を当たり前にしてだらだらさせない)
- ……
ハウツーを知っているだけでは意味がない。だらだらな会議に身を置きつつ内心で「こうやればいいのに」と思っているだけでも意味がない。大事なのはアクションを起こすこと。冗長でもダサくても面倒でも、ストイックにハウツーに頼ること。
必要なことだけをやる
例1: 複数回のレビューを経るものづくりの場合
- いきなり完成品クオリティを仕上げてあらゆる観点でレビューしてもらうのは(つくり終えるまでに時間がかかるため)非効率的すぎる。もし後戻りが発生したらと思うとゾッとする
- まずは「この観点のみをつくりこんで FIX させてみる」など局所化する。少しずつクオリティを固めて、積み上げていく。
- 漫画家を例にすると……:
- 編集者にチェックしてもらうのに、いきなり完成原稿を出すことはしない
- まずはネームというラフな落書きを出してストーリーやコマ割りを FIX した後、清書する
- 中には「完成原稿に近いネームじゃないとチェックしません」という傲慢な編集者もいるかもしれないが、できる限り編集者のスタンスを改めてもらうべき
例2: チームメンバーの誰もが対応できるよう仕事のやり方をマニュアル化する仕事の場合
- いきなり重たい Word で書き始めたり、本文を書きながらその都度図表や余白のレイアウトを整えたりするのは早計
- 後戻りコストが大きい
- 本文の検討に集中できない
- 最初に目的と要求水準を確認する。たとえば「チーム内で見るだけなので口調も見栄えもテキトーでいい」だとしたら、Word を使わずテキストファイルにサクッと書くだけで済むかもしれない
一般的にまとめると:
- 後戻りコストをできるだけ小さくすることを考える
- マルチタスク(同時にこなす)のではなく、シングルタスクを積み上げていく方が集中しやすい
- Before) いきなり Word で本文書きつつ、図表余白のレイアウトを整えていく
- After) まずはテキストエディタで本文を書く、図表作成ツールで図表を書く、それらをレビューする、一通り済んだら Word にマージして全体の見た目レビューをする
手段の最適化
仕事で使っている道具や方法論について理解し、効率的に扱えるようにする。勉強や習熟は一朝一夕にはいかないが、知っている・知らない、やっている・やっていないとでは労働時間に 数十分/Day 以上の差がつくと個人的には思っている。
PCを軽くする
PC が重いことの弊害:
- 作業中、常に触ることになる PC が重たいと……
- 単純に作業を終えるまでに時間がかかる
- ストレスが溜まり、エネルギーが削がれる
軽くする方法:
Windows PC を何の設定もしないまま使い続けている人は、一通り勉強した方がいい。たとえるなら誰にも何にも頼らず我流で一人暮らしをするようなものか。普通は両親や友人に訊いたりネットや本で調べたりして効率的なやり方をどんどん取り入れるはずだ。
よく使う手順を省力化する
- 手順をチェックリスト化・タスクリスト化して、機械的にサクサクこなせるようにする
- スクリプトやツールで自動化する
- 毎日習慣的にこなす
- 1日1分で済む作業をサボって月末に20分かけて行うと負担が大きい
よく使う資料は見やすい場所に配置する or 自分の言葉でまとめる
Bad:
- 毎回チャットの過去ログを辿っている
- 毎回共有フォルダの深い階層を「どこだっけ」と呟きながら探したりしている
Good:
- ローカルにコピーする、要点をテキストファイルでまとめてそれを見るようにするなど「情報の複製」や「要約の記録」を行う
- ただし資料によっては「コピー禁止」もあるのでルールや取り扱いは要確認。
作業ファイルは日付とコメントのフォルダで整理する
デスクトップにテキトーにファイルを置いて作業している人を見かけるが、どんどん散らかってくるためどんどん能率は悪くなる。
弊害:
- 弊害1: デスクトップにアクセスする度に「散らかったデスクトップを」見て判断する作業が(無自覚であることも多いが)入ってしまい消耗する
- 弊害2: ファイルを探す際、散らかったデスクトップという多数のファイルが常に相手となり、しんどい
じゃあどうすればいいの?:
- YYMMDD_COMMENT フォルダを作って、そこで作業する
- 例1: 180831_社内Git勉強会アンケート集計
- 例2: 171120_新年会2018幹事
YYMMDD_COMMENT フォルダはいつ作るの?いつファイルを入れるの?:
- 案1: 新しい作業が発生する度に作る、入れる
- 案2: 普段はデスクトップで作業し、週一くらいで「あまり使ってない分」についてフォルダを作り、入れる
YYMMDD_COMMENT フォルダで弊害はどう解決する?:
- 弊害1: 消耗 → 消耗しなくなる
- 上記の案1 を取り入れたらデスクトップは「YYMMDD_COMMENT フォルダを並べたフォルダ一つのみ」で済む。常にスッキリ
- 弊害2: 探しづらさ → 探しやすくなる
- フォルダ名と記憶を頼りにスピーディーに探せる
- フォルダ単位で関連ファイルがまとまっているので利活用もしやすい
もっともこれは数ある整理術の一つでしかないが、YYMMDD_COMMENT フォルダは(精神的負荷はさておき)比較的簡単に取り組め、かつ効果も高いやり方だと思う。
おわりに
かなり雑多な内容になってしまったが、まとめるとアプローチは以下に大別できるかと思う。
- 逃避 …… 残業がつきまとう場所(会社や部署や人間)を避ける
- 回避 …… 本質的に残業の多い仕事を避ける
- 主張 …… 残業が増えないような事情や意見や価値観を主張する
- 削減 …… 時間を消費する道具、プロセス、やり方などを潰す
- 強化 …… 効率や生産性を高める働き方や方法論を覚え、実践する